地域活動も、「山田の牡蠣くん」も、人とのつながりが原動力に

 牡蠣が苦手でもこれなら食べれる!と評判の、牡蠣の燻製オリーブ漬け「山田の牡蠣くん」。

 岩手県山田町で、漁師である佐々木俊之さんと娘の里実さんが、牡蠣の養殖から加工、販売までを一貫して手掛けています。

 「山田の牡蠣くん」を全国のお客様に届けながら、山田町で地元の皆さんと一緒に様々な地域活動に取り組まれている里実さんに、これまでの歩みと、今後への想いを伺いました。

佐々木 里実さん


東日本大震災を乗り越えて

12年前、里実さんがまだ学生の頃、俊之さんは「山田の牡蠣くん」の生産販売を始めました。「父が昔、牡蠣をむくのが遅くて、それなら付加価値をつけて人の倍の値段で売ろうと考えて。趣味のシーカヤック仲間につまみで出して感想をもらったりして、試行錯誤しながら、最終的に燻製のオリーブオイル漬けにたどり着いたようです」と里実さん。俊之さんは、まだ6次産業という言葉も浸透していなかった頃から、自身が育てた牡蠣を独自の製法で加工して瓶に詰め、パッケージも改善しながら、徐々にファンを増やしていきました。

販売が軌道に乗り始めたころ、里実さんは専門学校を経て、地元に戻ったのを機に手伝いはじめます。「最初は正直そんなに(手伝いが)続くと思わなかったのですが、手伝い始めてから1年経たないうちに東日本大震災があったんです。工場が津波で流されてしまい、再建しようとなったので、もうちょっと手伝ってみようと。その後も何だかんだずっとやって、今に至ります。」

震災後に生産は一時ストップするも、全国のお客様から応援があり、わずか4か月後には花巻市起業化支援センターで生産を再開。2年後には山田町に戻り、高台に工場を再建しました。

やまだくじら大学(仮)で広がった「つながり」

 FIDRが里実さんと出会ったのは、FIDRが震災後2016年に再建を支援した山田町の大沢川向コミュニティセンターでの地域活動でした。当時ヨガの活動に参加していた里実さんは、その後、山田を楽しもう!をコンセプトに山田町の人々が様々な地域活動を行う「やまだくじら大学(仮)」という団体のメンバーとして今も活動しています。里実さん曰く「この(仮)が大事なんです。重々しく名前をつけるとちゃんと活動しなきゃ!となるけど、(仮)があるからで何でも気楽に、ラフに色々なことやっていこう、と。」


ハンドメイド部で出店したフリーマーケット

 地域のイベントを手伝うイベントボランティア部や、ひたすらラーメンを食べ歩くらぁめん部など様々な部活動があり、里実さんはハンドメイド部に所属して、新型コロナウイルスの流行前は町内外のフリーマーケットなどに出店していました。

 やまだくじら大学(仮)に参加してから、人とのつながりが増え、新たな発見もあったと言います。「地域活動やフリマなどのイベントを通じて、今まで関わる機会がなかった人と知り合えるのが面白いです。そこで何かぽろっと質問すると、誰かが必ず教えてくれるんですよ。町内でもまだまだ知らないことがあるんだなぁと思います。皆さんが『山田の牡蠣くん』を知り合いにおすすめしてくれたり、贈り物に使ってくれたりするのも嬉しいですね。」


ゴミを拾うだけじゃない!「やまだのゴミをなくし隊」

このような活動の場があることは、里実さんの新たな挑戦にもつながりました。山田町の海岸でゴミ拾う、その名も「やまだのゴミをなくし隊」です。Facebookで告知して、誰でも気軽に当日参加できます。

「始めたきっかけは何気ないことなんですけど、普段行かない海岸沿いの奥の方にふらっと出かけて、ぱっと下を見た時に、ゴミ多いなって気づいて。小さい頃から海の近くで育ってきて、親しみがある場所に、ゴミが多い、、、よし、拾うか!ってなって。せっかく周知して活動できる場があるので、同じように思ってくれる人がいれば嬉しいな、皆でわいわい楽しくゆるっとゴミを拾えたら良いなと思って始めました。」

 

やまだのゴミをなくし隊のゴミ拾い活動


雄大な自然の景色も楽しみながら

 やまだのゴミをなくし隊には、裏のテーマがあるのだそう。「ゴミを拾うだけでなく、景色も楽しみながら拾うんです。普段行かない場所でも、よく行く場所でも、ゴミを拾いながらだと自然と足が止まるので、これまで気づかなかった景色が目に入ったりします。いつもの海岸を違う視点から見て、新しい景色を発見できて面白いですよ。ここってこんな所もあったんだね~と皆で話しています。」


やってて良かった、と思う瞬間

20203月からコロナの影響で、地域活動だけでなく、「山田の牡蠣くん」の催事販売は全て中止になりました。そこでネット販売に注力し、売上は順調に伸びているそうですが、「それでもやっぱり、催事がやりたい」と里実さんはいいます。「催事をきっかけに好きになってくれて、ずっと買い続けてくれてる方もいますし、やっぱり顔を見て話せると違うなと思います。ネットでずっと購入してくれて名前しか分からなかったお客様が、催事に来てくれた時は『あ!〇〇さんですね!ありがとうございます!』って、ちょっとした有名人に会えた気分で(笑)。

コロナ前に行われていた催事(社長の佐々木俊之さん)


 そんな風にリピーター様と会えた時とか、美味しいからいつも買ってるよとか言ってもらえた時は凄く嬉しいです。最初は、売れるのかな?と思いながら始めた催事でしたが、いつの間にか、それこそ地域活動と一緒で、人とのつながりが見えると『やってて良かったな』と思います。コロナが落ち着いたら、またやりたいですね。」

また山田町に来てほしい

山田町の魅力について、里実さんは「自然豊かで遊べる場所も多い」と語ります。「山田は海のものも、山のものも美味しいんです。山田の道の駅に行くと、地元の海、山でとれた食べ物が沢山売っています。あと、私も父の影響で小さい頃からシーカヤックをやってますが、山田湾は波が穏やかで、オランダ島もあり楽しめるので、全国からカヤッカ―が訪れるんです。色々な魅力があるので、皆にこういう場所があることを知ってほしい。コロナが落ち着いたら、ぜひ来てみてください!」

里実さんのおすすめ!「山田の牡蠣くん」と「山田のあかちゃん」


不動の人気を誇る牡蠣の燻製オリーブオイル漬けは、まろやかな味わいで、ワインによく合います。残ったオリーブオイルにも燻製の風味と牡蠣の旨みが移っているので、炒め物やサラダのドレッシングにするといつもと少し違った味付に。最後までまるごと楽しめます!

実は牡蠣が食べれないと言う里実さんが特におすすめするのが、こちらのアカザラ貝のあかちゃん。醤油ベースの味付けのため、日本酒がよく合うそう!そのまま食べるのも良し、刻んでチャーハンや焼きそばに入れるのも良しで、色々な楽しみ方ができます。