2016年に佐々木さんも参加したカラオケ交流会の様子
現在は、漁業の傍ら、歌手活動や番屋体験プログラムの提供と幅広く活動している佐々木さん。
「人との出会いの中で、番屋しかり、歌手活動しかり、相手が求めていることに対してやれる範囲で活動してきた。それが山田の食材のPRになってくれたら」と佐々木さんは語ります。
3年程前から始めた番屋体験も、人との出会いがきっかけだったと言います。
震災後、佐々木さんは学生ボランティアを受け入れてきました。危険な作業を伴う漁業では、ボランティアの受け入れは容易ではありません。それでも、震災から時間が経ち、受け入れ先が少なくなる中で、佐々木さんは受け入れを続けました。
その度に受け入れるための道具や設備が増えていきました。
震災の話や漁業について説明するのにも慣れてきた頃に出逢ったのが、やまだワンダフル体験ビューローの服部さんだったそうです。
「服部さんは浜のごみ拾いをした時のメンバーだったんですよ。掃除が終わった後、うちの作業場に連れてきて、アカザラ貝やムール貝の説明をしていたら、ここにお客さんを連れてくるのをやってみませんかという話になったのです。」
佐々木さん自身、山田町の漁師として思い悩むことも少なくありません。
山田町は「漁師の町」といわれる一方で、漁業で生計が立てられず、結果として漁師の跡取りが育たないという悪循環が、震災前からの課題でした。
そんな中、震災は追い打ちをかけるようなものでした。2011年の震災直後の急激な漁獲量の減少からは持ち直したものの「ここ2、3年は一気に不漁に入った」と言います。
その背景にあるのは、地球温暖化、マイクロプラスチック、化学物資など、近年問題となっている環境汚染。それに加え、魚の乱獲も原因の一つです。佐々木さんは、「人間が獲らなければ、魚は復活するのは見えている。でも各浜の漁師は、それで生計を立てているわけで、自分だけが獲らないというのも難しい話です。」と葛藤を語ります。
「現実は、私は日本人として、被災地を抜きにしたとしても、相対的貧困です。僻地では、半数以上が貧困と見ています。漁師は本当に儲かっているところは、1割はあるかもしれませんが、9割は儲かっていません。実は日本にも貧困があることを訴えていかなければなりません。」と、佐々木さんは厳しい現実を訴えます。
「日本に住んでいようが日本以外に住んでいようが、ちゃんと生きるエネルギー、飲む水も、食べ物も、お金がちゃんと日本の人にも他の国の人にも回るような社会を作っていけなければなりません。しかし、現実は貧困家庭からはエネルギーが吸い取られていっています。
江戸時代は、お金持ちの長者様は山を買ったものです。山を買って木を植えて、結果的にそれが畑や海をよくしました。今の世界の長者様がどれだけこの地球のことを考えているかというところだと思います。決定権を握っているのは、億万長者の方だからです。どれほど私のような力のないものが言っても響きません。
鶴の一声で、社会がよくなります。地球がよくなります。また、歌手活動をしている歌詞の内容もそうです。自分がどこまで漁業人生、佐々木友彦の人生をやり切れるかわからないですが、歌として作品は残しました。誰かに響いてくれたら成功かなと思います。」
大漁旗を揚げろ ~友~ 佐々木友彦~
作詞も作曲も手掛ける佐々木さん。歌には、佐々木さんの思いや人生が詰まっています。
以前から海資源を大事にし、持続可能な社会を日々目指してきた佐々木さん。「ここ1年でSDGsを知るようになったから、自分がやろうとしてきたことはSDGsに関連していることもあるんだなと思って。」と語ります。
億万長者ではなくても、海の資源を守るため、持続可能な社会のため、私たち一人一人が今できることを考えていかなればなりません。
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