町の魅力発信~地元住民の挑戦に伴走する「よそ者」として~

震災後、山田町が公募していた「復興コーディネーター」に採用されたのがきっかけで、東京から山田町に移住し、山田町の復興支援に携わってきた服部さん。

2016年に立ち上がった、山田町の体験観光の窓口を担う「やまだワンダフル体験ビューロー」のコーディネーターとして今まで活躍してきました。

当時、FIDRが山田町で行っていた新しい町づくりに向けた活動に服部さんが参加されたことが、FIDRとの出会いでした。

▶当時のFIDRの活動はこちら ▶2019年の服部さんへのインタビュー記事はこちら 


地元の人の挑戦とともに

山田町は東日本大震災で甚大な被害を受け、人口が一気に3,000人減ってしまいました。その中で「やまだワンダフル体験ビューロー」は、町の復興のため、山田町ならではの「遊び」「文化」「食」「人」「職業」に触れる体験を通して、「楽しい!」「おいしい!」山田町を知ってもらい、山田町のファンを増やすための取り組みを行っています。

服部さんは山田町に移住してから7年間、山田町のファンづくりのため、様々なことにチャレンジしてきました。自身の仕事について、「山田町にあるものを活かして、とりあえず出来ることからやってみて、お客さんを山田町に呼んでくること」と言います。

地元の漁師グループ「マリン・ツーリズム山田」は、震災前は主に県内の子どもたちへの養殖漁業体験を行っていました。しかし、震災で船や漁業施設が流され、グループの活動を中止せざるをえませんでした。メンバーの皆さんは再開したいという強い思いがあったものの、再開するにあたって様々な手続きがネックとなっていました。服部さんがそれをサポートしたことで、活動を再開。その後は、県外からも広くお客さんを受け入れ、養殖いかだ体験など漁業を中心とする体験プログラムを提供しています。


 

昨年1月には、「マリン・ツーリズム山田」が第15回JTB交流創造賞の最優秀賞を受賞しました。服部さんが、漁師の方の努力を多くの人に知ってもらいたいとの想いで、応募したそうです。

「賞を頂いたのは本当に良かったです。体験プログラムを商品とするには、受け入れる地元の人にどれだけ楽しんでやってもらえるかがもっとも重要です。次にお客様を受け入れることで収入を得られるようしなければ、負担になったときに続けられなくなってしまいます」と語ります。

 

震災から10年、「マリン・ツーリズム山田」を含め、地元の方々が行う体験プログラムが増え、山田町に観光客の姿が見られるようになりました。リピーターのお客様も、新たなお客様も来て、山田町が県外の人にも「おいしい山田」、「楽しい山田」という良い印象で知ってもらえるようになったようです。

「旅行会社からも岩手県山田町という存在を知られるようになり、山田に来れば何かができるとようやく思ってもらえるようになりました。ここにたどり着くまで、地元の人々と信頼関係を築くことからはじめて3年かかりました」

「よそ者」だからこそできること

「よそ者」だからこそ、できることが多くあるそうです。

体験プログラムを行う農家や漁師の方は、「とても恥ずかしがり屋で、初対面の人が苦手な方が多い」と言います。また、自分たちが育てた野菜や海鮮は農協や漁協などに卸し、消費者と直接会って話す機会がなかったため、最初は体験プログラムを実施してお客様を受け入れることを躊躇した方が多くいたそうです。


そこで、服部さんは最初、会話をすることを無理強いせずに間に入ってサポートしました。農家や漁師の方は、お客さんが喜ぶ姿を見るうちに、徐々に自分から話しかけるようになったそうです。

「お客さんが自分の目の前で食べ、笑顔で「おいしい」と言ってくれるので、農家や漁師の方は自分が作ったものがおいしい!のだと改めて気づき、生産者としての「誇り」ももつようになりました」

 

新しい体験プログラムを開発するとき、服部さんが一番大事にするのは、コミュニケーションだと言います。

「(私の提案に)いやだという方に対して無理強いはしません。でも、お話しているうちにちょっとでも『やってみたい』という気持ちがあるのがわかれば、その部分引き出して不安なところを一緒に解消して後押しします。急かさず、焦らずに、やってきました」

コロナ禍から更なる展開と今後の願い

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言で、昨年の4月から7月まで、山田町にはほとんど観光客が来ませんでした。秋になって、GOTOトラベルキャンペーンがはじまり、少しずつ観光客や修学旅行が戻ってきました。また1月からの緊急事態宣言でほとんどキャンセルとなりましたが、

「コロナ禍で関東・関西からのお客様は激減しましたが、そのかわりに盛岡など県内の方々が多く来てくれるようになりました。県内にはまだ旅先としての山田町を知らない方が多くいて、知ってもらう良い機会になりました」

 

今年4月より、服部さんは隣接する大槌町に活動のフィールドを移しました。「やまだワンダフル体験ビューロー」は、山田町観光協会に引き継がれました。「地元の方と一緒に活動を継続してもらいたい」と服部さんは願っています。

「三陸は最高に魅力的なところなので、もっと多くの方に知ってもらいたいです。ぜひ農家、漁師とガイドの方に会いに来てください」

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