山田町のひとが慣れ親しんだ味を守る

 山田町にある創業56年の老舗、くりっこ屋菓子店。

「かりんとう」や「いかせんべい」など、くりっこ屋さんの駄菓子は、山田町のひとなら必ず1度は食べたことがあるといいます。

 家族で経営されており、現在三代目として工房に立つ甲斐谷陽平さんにお話を伺いました。

 

 FIDRは東日本大震災後に山田町で復興支援をしていた際、町のひとたちの交流促進を目的に行っていたカラオケ機器の貸与の機会に、甲斐谷さんに出会いました。

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                              甲斐谷 陽平さん


即日完売の名物お焼き「くりっこ焼き」

 くりっこ屋さんの名物といえば、栗の形をしたお焼き「くりっこ焼き」。創業時は「甲斐谷菓子店支店」だった店の名称も、くりっこ焼きを買いにくるお客様から呼ばれるようになった「くりっこ屋さん」に変わったそうです。

 くりっこ焼きは毎月1日頃に数量限定で販売され、当日中に完売する人気商品。もともとは、お祭りの時だけに販売するお菓子だったそうです。

 「以前は山田町の『秋祭り』など、お祭りだけで販売していました。地元のひとや帰省客がその時しか買えないからと沢山買いに来てくれて、口コミで広がっていきました。


お客様からもうちょっと(買える機会が)あればいいなという声があって、2018年にお店を改装したのを機に、店頭でも販売を始めたんです」

初代から愛されてきた粒あんのくりっこ焼きに加え、甲斐谷さんは昨年から新しく「カスタード入りくりっこ焼き」を開発しました。「あんも美味しいけど他の味も食べてみたい、というお客様の声がきっかけでした」。お店で一から手作りしたカスタードクリームが入ったくりっこ焼きは、粒あんに負けずリピートも多い大人気商品だそうです。

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お客様の声をきっかけに、新しいビジネスモデルを確立

 甲斐谷さんは「くりっこ焼きの賞味期限延長の独自製法の確立」と「どら焼きの皮の単品売りによるBtoBへの進出」の取り組みにより、2020年にいわてビジネスイノベーションアワードで経営革新部門の特別賞を受賞されました。どちらの取り組みも、お客様の声をヒントに考案されたといいます。

 くりっこ焼きは月に1回しか販売しないため、その時に買いに来れない人や、お土産であげたいという人から、日持ちするようにしてほしいという声があったそうです。「賞味期限を延長させるために、今までどおり添加物は使わずに、脱酸素剤を用いて、味が落ちないようレシピも改良しました。


お客様からは『お土産にしたよ』『帰省した人に食べてもらい、美味しかったと言ってたよ』と喜んでもらえるので、作って良かったです」

日頃からお客様とのコミュニケーションを大事にされている甲斐谷さん。「うちは製造も販売もしているので、お客様との距離が近いです。地元団体から意見をもらったり、お客様からの『こういうのがあったら良いね、こうなったら便利だよね』という声からヒントをもらって、次の取り組みにつなげています」

改良されたくりっこ焼き


地域密着型で、手づくり駄菓子の味を残していきたい

いかせんべいをつくる甲斐谷さん

 様々な新しい取り組みをされる一方で、甲斐谷さんが変わらず大切にしていることがあります。それは、昔ながらの手づくり駄菓子の味を守ることです。「昔、(山田町では)かりんとう、いかせんべい、みそぱんとか、沢山売っているところがありました。それが、同業者が後継者不足等でだんだんと辞めてしまって。特に東日本大震災がきっかけで、これから再建しても…と、店を閉じてしまう方が結構いました。その味を、私は残していきたいと思っています」

 また地元の方からの、どんな注文にも応えることを大事にしています。「冠婚葬祭の団子とか、お祝いでつかう大福とかで、どうしても急な注文も入ります。うちは、そういうのにも対応できる、小回りのきく店なので、どんな注文にも対応して、『助かったよ』とか『美味しかった』という声が聞けると、良かったなと思います」

 


くりっこ屋の人に会いに来たい、と思ってもらえる店に

 くりっこ屋さんのSNSでは、甲斐谷さんが実際に駄菓子を作る様子など、様々な写真や動画が紹介されています。 「学生時代から(駄菓子づくりの)仕事を楽しんで見ていました。見るのは簡単だけど、やるのは難しい。10年かかって、まだまだという感じですけど、やっとここまで、動画で見せられるくらいには上手くなりました」

 甲斐谷さんはいま、新しい商品の開発を考えているといいます。「実は、お店の目の前に、『道の駅やまだ』が移転してくることになったんです。道の駅やまだの帰りに、くりっこ屋に寄ってくれることも期待できます。初めて来たお客様の目にとまるような、リピーターになるきっかけとなるようなお菓子を作れたらいいなと思っています」

 「うちのお菓子は地元の方にも、お土産でも買ってもらっています。県内の内陸の方とかがたまに、こっちにきて、『普段は内陸のお店で買ってるけど、たまにはこっちの皆さんの顔を見に買いにきました』という方もいます。山田町に、くりっこ屋の人に会いに来る、そういう店をつくりたいです。それが、山田町の活性化に少しでもつながればと思っています」


甲斐谷さんのおすすめ!くりっこ屋さんの駄菓子


創業時からのロングセラー商品。

店頭で毎月1日だけの数量限定販売なので買えたらラッキー♪

甘すぎず上品な味で、お土産としても大人気。渦巻き模様は、三陸沿岸のかりんとうの特徴なのだそう。

スルメイカのだし汁をエキスにして生地に仕込んでおり、素朴なイカの風味が楽しめます。



山田町にお出かけの際には、ぜひお試しください!

※お取り寄せをご希望の方は、くりっこ屋さんにお問合せください。

住所:岩手県下閉伊郡山田町山田5-66-20  電話番号:0193-82-5507